演出としての締込

過日、NHKで太鼓奏者の林英哲氏の対談番組を拝見しました。
曰く、「恵まれない境遇を嘆かない」
この言葉の重みは沁みました。

打芸より気迫を先に問うた先達。
そこに今も確かな疑念を持つ。その分野の頂きを知る人ならではの感慨です。
しかしごく客観的には、そこに、往時の時代の空気を思う人もいます。

当時だから出来たこと、今では決してしないこと。
褌姿で舞台に立ち、背中を見せて撥を持つ。
当事者の気持ちとは別に、この演出が今なお息づき受け継がれるのは、
あるいは、舞台演出としては秀逸だったからではないか、そう思うのです。

今回、舞台や祭礼などで和太鼓を演奏する際に、
「衣装として六尺褌を用いることのある団体および個人(団体非所属)」を調べてみました。
内訳として、プロ・アマおよび個人団体の違いは問わないこととしました。

北海道 1
東北 3
関東 5
甲信越 2
中部 2
中国 3
四国 1
九州・沖縄 4

いかがでしょうか?
ご覧のように、全国にあまねく存在していることが解ります。
この数は多い、若しくは少ないと感じられたでしょうか?

上記とは別に、
「かつては恒常的に用いていたが現在は用いていないもの」が
3団体(東北2、関東1、中国1)
「コンテストなど特別な場合に用いた例が過去にあるもの」(関東2)
が、それぞれあるようです。
これはメンバーの入れ替わりによって、演出効果の変更を余儀なくされた、と推認します。

もっとも、その着用は
「年に一度の祭礼や大会場での公演」など
「特別な場合」に限っているところが少なくありません。

つまり、褌姿での演奏が、もはや一つのシンボルになっている奏者がいる一方で、
その「非日常性」こそが強さだと認識し、
特別な時にこそ「褌を締めて掛かる」向きが多いのでしょう。

「海外公演」では、明らかに鼓童や鬼太鼓座を意識しているでしょうし、
「和太鼓コンテスト」では、衣装への加点項目があったとしても、
目の前の肉体という衣装は、なかなか越えられないように思います。

実際、多くの人にとって、褌姿で太鼓を打つ奏者を目にする機会は非常に少ないはずです。
しかしながら、現実には「こんなに多いのか」と私は感じました。

見たことも無い状況が、
そのインパクト所以に情報として伝播され、
「太鼓と言えば褌」という「目にしてはいないが暗黙に共有されている」という
大変不思議な状況に置かれています。

これは、時代を越えて、
センセーショナルがムーブメントに変わった、
と言えるのではないでしょうか?
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